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るるりっこ


2015年8月号  第15話「二人の決断」

 小学校5年の秋から約1年半の間、島を飛び出し伊勢のソフトボールのクラブチームに通ったルルとリコ。そこでは、思ってもいなかった出来事が次から次へと巻き起こり、島の中ではできなかったであろう多くの初めての経験をしました。
 そして多くの「気づき」があったようです。特に「ありがとう」という気持ちが、日常でこんなにもあると知った事が彼女たちを大きく成長させたようです。と同時に、今後の進路を左右させるであろう、ある「強い思い」が二人に芽生えていたのでした。
 その思いとは、「島が好き」「島の人たちが好き」という地元を愛する気持ちでした。それは、島からクラブチームに通う都度、船に乗る際多くの島の大人の方から「えらいなあ、頑張ってな」という言葉をもらっていたこと、また、島の友達からも事あるごとに「頑張れよ」という励ましの言葉をもらっていたことがあったからでした。
 そしてルルとリコ…小学校6年生の2月。卒業間際に思わぬ話が舞い込んできました。それは、ソフトボールの強豪校の父兄の方からで「二人で越境してこちらの中学に来たらわ」というお誘いの話。というのも島の中学校にはソフトボール部はあるものの、2つ上にいるルルとリコの姉達が数ヵ月後の7月に引退すると部員数が少なくて廃部になる可能性があったからでした。ルルとリコの姉たちの年代の部員数は11名でしたが、その下の年代は1名だけだったのでした。実質、島の中学校でソフトボールができる期間は3ヶ月というのが見えていたからでした。
 ルルとリコの親は、そのお誘いの話と将来の事を含めて本人達に神妙に話したところ…
 「島の中学校でソフトするよ!」
 「姉ちゃん達とソフトするよ!」
と、あっさりした返事が返ってきたそうです。それぞれの両親は唖然とし、もう一度…
 「ソフトできやんようになってくよ、いいの?」
と問いただしました。それでもルルとリコは…
 「島でソフトがしたい。」
 「答志の仲間とソフトがしたい。」
 「もしかしたら、下の学年の後輩がたくさん入って  くるかもしれやんし!」
「答志中で県大会優勝してみたい!」
と二人は小学生ながらに強い意思を示したそうです。その思いの背景には、これまで島の人にあたたかい声をかけてもらった事や、島の友達の大切さを知ったという心の成長でもあったのです。
 両家の親は、強豪校に行けば必ず輝ける環境なのにと思いながらも、ルルとリコに押し切られた感を持ちながらも、二人の気持ちを尊重したのでした。そして、少しでもいい環境、思いっきりソフトボールを楽しめる環境にしてあげたいと願い支えていくことを決意したのでした。
 ルルとリコのこの決断で、小学生時代のルルとリコを知るソフト関係の人達からは「もったいないなあ」という言葉が。また、一部の人達からは「リコとルルは終わったなあ」とも囁かれたそうです。
 そして桜舞う4月。そんな事を囁かれていることを知ってか知らずか、二人は意気揚々と島の中学校に入学。当然のようにソフトボール部に入部。
 しかし想像以上の困難が待ち構えていることをまだ知る余地もない二人だったのでした。


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