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るるりっこ


2015年12月号  第19話「明日、勝となあ~」

 春の県大会で一回戦を勝ち抜き、二回戦では強豪度会中との戦いでコールド負けをしたものの、夏の大会での可能性を見つけた島のソフトボール部は、夏の大会に向かっての明確な目標を見つけ、これまで以上に気合を入れて部活そして父兄とのナイター練習に励みました。
 しかし、夏の県大会に出場するには鳥羽志摩地区で優勝しなければなりませんでした。春の大会では鳥羽市での優勝で県大会に出場できたのですが、志摩地区を含む優勝となると、強豪の文岡中に勝たなければなりません。当時の文岡中は県大会でも毎回上位に食い込む強さで答志中はこれまでもなかなか勝利することができませんでした。
 それでも答志中は【打倒文岡中!】を掲げ、志摩大会優勝を果たし県大会出場を目標にしました。この目標には勝った負けたの結果よりも、また県大会出場の価値よりも、もっともっと深いところにその真髄が隠されていました。
 それはこの夏の大会で敗北した時点で10人の三年生が引退してしまう事。これはどこのチームでも同じ事なのですが、答志中はこの三年生が引退してしまうと二年生のヒナ1名・一年生はルルリコとハズキの3名の合計4名になって、試合はもちろん練習さえも困難になるということで、ソフトボール部自体が廃部になってしまう可能性があったのでした。
 もちろん一年生のルルリコ、ハズキはそれを承知で入部していたのですが、少しでも長くソフトボールをしたい、先輩たちとソフトボールをしたいという
気持ちが大きかったのでした。特にルルとリコはそれぞれに実の姉が三年生にいた事と、島の仲間とソフトボールをしたい!という気持ちが誰よりも強かったので、そう簡単にこの環境を終わらせたくなかったのでした。
 この時期からルルとリコそして、ルルの姉ルイ・リコの姉マユの4人は週2回のナイター練習以外の日も、近くの浜辺の外灯の下で両家の親と一緒にティーバッティングの練習を毎日するようになっていきました。それとともに、メンバーの【リーヤン・コンチ・エム・ヒナ】達も毎晩父親を引っ張り出し親子の自主練習を始めていました。
 こうして島の子ども達の強い想いから、父兄を含めて目標に向かう環境が出来上がっていきました。少しでも長くソフトボールが楽しめるようにと…。
 そして最後の大会を明日に控えた7月19日の晩、
ルルリコの一家は、いつもの浜辺の自主練習場に集まっていました。この日に限ってはガッツリ練習するというより全員が想いにふける感じでした。
 ルル…「明日勝てるかなあ?」
 ルイ…「勝てるに決まってるやん!」
 リコ…「でもさあ、もし負けたら、もうソフトできやんくなるんよなあ…」
 マユ…「りこ、気持ちは分かるけどさあ、とりあえず明日がんばろや!今を一生懸命な気持ちいっぱいにしてたら、絶対良い事あるって!後の事は、私もルイも他の三年生も一緒になって考えるからさあ。」
 リコ…「わかった~。明日絶対勝となあ。」
 という会話に、両家の親もそれぞれの想いにただただうなずくだけでした。
 翌日、いよいよ夏の県大会地区予選の日。答志中は負けてしまえば最後の大会という現実を背負って、強豪の文岡中との決勝戦に臨もうとしていました。彼女たちは臆することなく、その瞳は不思議なくらいキラキラと輝いていました。
 「集合!」
 主審の声がグランドに響き渡り試合が開始されました。


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