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るるりっこ


2016年8月号  第27話「別々の結果」

 2010年秋。翌年3月に開催される「第7回都道府県対抗全日本中学生女子ソフトボール大会」に出場するための三重県選抜チーム17名を決める最終選考会が明和中学校で開かれました。この日、これまで約150名程の参加者から第一次選考会で40名に絞られたメンバーが集結し、三重県代表の座をめぐる熱き戦いが始まりました。
 選考会では主に試合形式での審査が行われ、まだ1年生であり、自チームが人数不足で試合経験もないリコとルルにとってはかなり不利な状況でしたが、それでも小学生時代の経験を活かして、上級生そして他校で頑張る同期のライバル達に必死について行く二人の姿がありました。そしてあっという間に選考会の一日が終わりました。その帰り道…
 ルル…「受かるかな~」
 リコ…「受かりたいよな~。でも、今までの練習もやるだけの事はやったし、今日もやれることは全部出し切ったから…。」
 ルル…「そうやよな!大丈夫やよな!」
 リコ…「ダメやったらまた来年もあるし!」
 ルル…「そうやな!まだ私ら一年やしな!」
 不安と期待が入り混じる心境を、まだ1年生という開き直りでなんとか抑えようとする二人でした。その会話を聞いていた二人の両親たちも、「そうそう、合格すれば最高だけど来年もあるからな!やれるだけの事はやったし、この選考会に出られただけでもいい経験させてもらったやん!ソフト続けててよかったやん!」と慰めるように話しました。そして合格発表までの一週間を何とも言えない心境でルルとリコそして両親も過ごすのでした。
 一週間後の午後6時…既に学校から帰宅していたルルとリコのそれぞれの家に合否の電話が鳴り響きました。
リコ父…「はい、ありがとうございます。」
リコは、すぐに合否の連絡と察知し、受話器を持つ父の横に張り付くように座りました。そんなリコを横目にリコ父はコタキ先生との会話を神妙な顔つきで続けました。
 リコ父…「…そうでしたか…はい…はい。…では宜しくお願いします。」
電話を切るやいなやリコが父に問いかけました。
 リコ …「どうやった?」
 リコ父…「合格したよ!」
リコは喜ぶ素振りもなく、間髪入れずに聞きました。
 リコ …「ルルは?」
 一瞬の沈黙の後…リコ父が無言で首を横に振ると、リコはおもいっきり泣き崩れ大号泣しました。
「ルルと一緒じゃなきゃ嫌や!ずっと一緒に頑張ってきたのに!」
リコの尋常ではない泣き方とその思いに父も涙が止まりませんでした。そしてほぼ同時刻、ルルの家でも同じような状況がありました。まさかの別々の結果に、時間が止まってしまったような状況で両家親も放心状態でした。
 しばらくすると、リコ母が「リコ、塾行く時間やよ!」と泣き崩れたままのリコに声をかけました。リコは行きたくない素振りを見せましたが、ようやく重い腰を上げ塾へ行く用意を始めました。リコ母は、「いつものようにルルを誘ってな」と二人の心境を感じつつも言葉を付け加えました。リコは小さくうなずくとまだ乾ききらない涙のまま家を出て、ルルの家の前に立ちました。涙の跡を消すように服の袖で顔を二度程ぬぐい、ぎこちない笑顔を作って「ルル~」とドアを開けました。開けたドアの正面にはいつものようにルルが待っていました。
 玄関先で向き合い、お互いぎこちない笑顔での沈黙の後…ルルとリコの瞳からはこらえきれない涙がとめどなく、とめどなく溢れ出しました。そして泣くだけ泣いた後…ルルがぽつりとつぶやきました。
 ルル …「しゃあねえなあ!選抜でレギュラーとれるようにこれからも練習付き合ったるわ!大会の応援も行ったるし!」
わざとらしく上から目線で言ってのけました。
 リコ … 「当たり前やわ!」
負けじと上から目線で言い返した。そしてようやく二人の自然な笑顔が戻りました。その様子を見ていたルル母は二人の友情の深さに涙し、別々の道を行かねばならない二人の将来を案じたのでした。


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